厄日

 7月15日、オフの帰り道のことである. 大学の後輩と別れてすぐに, 名前を呼ばれ, 振り返ると, そこには大学1厄介と噂される法学部の友人Aと, 同じ学科の友人B,Cの2人(Bは学科1の厄介)の3人が歩いていた. 話を聞くところ, Bが100万円のバイクを買った祝いをしに飲みに行くところらしい. 正直, オフのパーティの育成やバイトが重なってあまり睡眠時間が取れていなかったのと, オフの打ち上げで金銭不足なのと, Wカップの決勝が数時間後に控えていたため, めちゃくちゃ行きたくなかった. 上記の行きたくない理由を説明しても, 高価な買い物をした後の謎テンションと持ち前の厄介さで彼らは聞く耳を持たない. 最低限の保障としてWカップの決勝は見られる場所にするということでしぶしぶ同行した. 

 お店に到着すると, 自分が想像していた小汚い居酒屋ではなく, Barだったのである. しかも, そのBarは学科の先輩が経営しており, 大学生が経営していることもあって, おしゃれな感じではなく, 立ち飲みで,大きな音が鳴り響き, クラブに近い感じなのである(もちろん, クラブにもBarにも行ったことはない). 

 来店から少し時間が経つと,  厄介二人組は店の盛り上がり中心に, 自分とCは店の端っこに自然と移動していた. しかし, Cは, 同じ境遇で端に来ていた他学部の4年生のお兄さんと話がはずみ, 工学部の悲惨の状況を話すと, その人の知り合いの女の子を呼び, 二人で話せるように取り持ち, お兄さんはその場を去っていった. なんと羨ましい!しかも, かわいい!

 自分は店全体の傍観者となり, 誰の邪魔もしないことに専念した.そこから見える風景は, 互いに異性を求め合い, 争い合う若者たち. 友人と男性の間に割り込んでいく女性, 友人と女性の話を大声で遮る男性, 執拗にボディタッチする男性,  Aにいたっては酔っているとはいえ初対面の女性の胸まで触っていた. 始めは, これを性の乱れと感じていたが, 時間が経つにつれ, これが若者のあるべき姿で自分が他と違うのかと錯覚するほどに. このように, 隅で一人でつまらなそうにしていると, 時折店員のお兄さんが気を遣って声をかけてくれたりした. その優しさがまた辛い. 

 自分は, 一刻も早く, Wカップの決勝が始まることを願った. あと20分でキックオフである. 試合が始まれば, 試合に集中し, 周囲も気にならなくなるだろうと. しかし, そこで思わぬ来客. 同じ学科のカーストトップ層の3人組である. くそ陰キャが酒場の隅でコミュ症発揮しているところなんて, 誰が見られたいだろうか. ただでさえ肩身が狭いのに, 窒息しそうなくらい息を潜めた. 幸いにも3連休の中日であり, 混雑していたため彼らは他の店を探しにいった. 

 そんなこんなで待ちに待った, Wカップ決勝の開始である. しかし, 開始3分もしないうちに, Cから「Bが店の外で潰れてるからとりあえず, 代金払って店を出る」と告げられる. お酒がそんなに強くないBは, お酒が強くてコミュ力お化けのAにつきまとい, 女の子とお話しようとする, 虎の威を借る狐作戦をしていたため, Aのペースに無理にくらいついていたのである. 仕方なく介抱するために, 店を出ると, AもBも嘔吐していた. 

 結局, 彼らを送り届け, 家に着く頃には, 決勝戦の前半は終わっていた. 

 

こんなことを書きましたが, 今回の件に関する彼らへの妬みや嫉みが皆無とは言いませんが, 彼らのコミュ力や行動力は率直に尊敬してます. 厄介などと悪く書きましたが, 彼らはいい人とは言いがたいですが, いい友人ではあるので, 彼らが嫌いとか悪いとかいうわけではありません. 悪いとすれば, きっぱり断れない自分と偶然遭遇してしまった, 間が悪かったのだと思います.